■ 特許第3725079号の抜粋

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特許第3725079号 ネギ属植物処理物

全項目


(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】特許第3725079号(P3725079)
(24)【登録日】平成17年9月30日(2005.9.30)
(45)【発行日】平成17年12月7日(2005.12.7)
(54)【発明の名称】ネギ属植物処理物
(51)【国際特許分類第7版】

   A23L  1/212   
   A23L  1/30    
   C09K 15/10    
   C09K 15/34

【FI】

   A23L  1/212       Z
   A23L  1/212       A
   A23L  1/30        B
   C09K 15/10         
   C09K 15/34

【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2002-12071(P2002-12071)
(22)【出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
(65)【公開番号】特開2003-210132(P2003-210132A)
(43)【公開日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【審査請求日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成13年7月24日の社団法人日本農芸化学会北海道支部平成13年度春季合同学術講演会において文書を以て発表
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399118999
【氏名又は名称】株式会社 北海道バイオインダストリ-
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区平岸7条14丁目3-43
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
【住所又は居所】東京都渋谷区富ヶ谷2丁目28番4号
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘行
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区月寒東3条19丁目10-30
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 昭彦
【住所又は居所】北海道札幌市白石区南郷通8丁目北2-15-202
【審査官】村上 騎見高
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-054117(JP,A)
【文献】西村弘行,ギョウジャニンニクと食品加工(その2)薬効成分の変化,農業低温科学研究情報,1997年11月,Vol.4,No.3,44-45
【文献】C.HANNY WIJAYA 外3名,Influence of Drying Methods on Volatile Sulfur Constituents of Caucas(allium victorialis L.),J Food Sci,1991年,Vol.56,No.1,72-75
(58)【調査した分野】(Int.Cl.7,DB名)
A23L 1/212 – 1/218


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タマネギを一片の体積が平均で1~1000mm3である小片に切断した後、25~80℃で30~150分加温し、更に100~200℃で1~30分加熱することにより得られる、トリスルフィドの含有量が乾燥重量を基準として0.0314重量%以上であるタマネギ処理物。
【請求項2】
トリスルフィドが式(1):R1-S-S-S-R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基である)で示される化合物の1種以上である、請求項1記載の処理物。
【請求項3】
抗酸化性を有する、請求項1又は2の処理物。
【請求項4】
乾燥又は湿潤状態にある、請求項1~3のいずれか一項記載の処理物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の処理物を含有する食品。
【請求項6】
タマネギを一片の体積が平均で1~1000mm3である小片に切断した後、25~80℃で30~150分加温する工程と、更に100~200℃で1~30分加熱する工程とを含む、請求項1~4のいずれか一項記載のタマネギ処理物の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はネギ属植物の内在性酵素を合理的に制御するバイオラショナルコントロール技術を用いてトリスルフィドを効率良く増加させた、ネギ属植物処理物及びそれを含む食品に関する。また、本発明は、トリスルフィドを有効成分とする抗酸化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ネギ属(Allium属)植物(タマネギ、ギョウジャニンニク、長ネギ等)は、数多くの野菜の中でも最も多く消費されているものの一つで、近年生活習慣病の予防効果について多数の研究がなされ、脳梗塞・心筋梗塞などの動脈硬化症の予防(メチル アリル トリスルフィド、ビニルジチイン類、セペンなど)、発ガン予防(硫化アルキル類)、抗糖尿病や脂質代謝改善(含硫アミノ酸、硫化アルキル類)などに有効であることが明らかにされつつある。ここで、これら生理作用を持つ揮発性含硫化合物は、もともとネギ属植物中に存在している訳ではなく、内在酵素C-Sリアーゼの作用により二次的に生成するため、調理・加工の仕方により大きな差を生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者らの研究により、ネギ属食品中に二次的に生じる物質の中でトリスルフィドといわれる化合物群が、前記作用に加え、抗酸化作用をはじめとする各種薬理作用を奏することが新たに見出されたが、従来のネギ属植物の各種加工品(生、乾燥物、抽出物等)の中には、そのトリスルフィドに着目し、その含有量を高めた物は存在しなかった。近年における食生活の欧米化を背景に、過酸化物に起因した各種疾病が蔓延している中で、これらの各種疾病の予防や治療効果のある、体にやさしく副作用もない天然物を原料とした食品が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、これまで全く着目されていなかったトリスルフィドに注目し、ネギ属植物に一定の処理を施すことにより、抗酸化作用をはじめとする各種薬理効果が期待できる一定量以上のトリスルフィドが生じることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0005】
即ち、本発明(1)は、トリスルフィドの含有量が、乾燥重量を基準として0.015重量%以上(好適には0.02重量%以上、より好適には0.03重量%以上、特に好適には0.04重量%以上)であるネギ属植物処理物である。
【0006】
また、本発明(2)は、トリスルフィドが、式(1):
1-S-S-S-R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基である)で示される化合物の1種以上である、前記発明(1)の処理物である。
【0007】
更に、本発明(3)は、ネギ属植物がタマネギである、前記発明(1)又は(2)の処理物である。
【0008】
また、本発明(4)は、抗酸化性を有する、前記発明(1)~(3)のいずれか一つの処理物である。
【0009】
更に、本発明(5)は、乾燥又は湿潤状態にある、前記発明(1)~(4)のいずれか一つの処理物である。
【0010】
また、本発明(6)は、前記発明(1)~(5)のいずれか一つの処理物を含有する食品である。
【0011】
更に、本発明(7)は、トリスルフィドを有効成分として含有する抗酸化剤である。
【0012】
また、本発明(8)は、トリスルフィドが、式(1):
1-S-S-S-R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基である)で示される化合物の1種以上である、前記発明(7)の抗酸化剤である。
【0013】
更に、本発明(9)は、ネギ属植物を、一片の体積が平均で1~1000mm3である小片に切断した後、25~100℃で30~150分加温することを含む、ネギ属植物処理物の製造方法である。
【0014】
また、本発明(10)は、前記発明(9)の方法で製造したネギ属植物処理物である。詳細には、以下の発明である。
即ち、本発明1は、タマネギを一片の体積が平均で1~1000mm3である小片に切断した後、25~80℃で30~150分加温し、更に100~200℃で1~30分加熱することにより得られる、トリスルフィドの含有量が乾燥重量を基準として0.0314重量%以上であるタマネギ処理物である。
また、本発明2は、トリスルフィドが式(1):R1-S-S-S-R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基である)で示される化合物の1種以上である、前記発明1の処理物である。
更に、本発明3は、抗酸化性を有する、前記発明1又は2の処理物である。
また、本発明4は、乾燥又は湿潤状態にある、前記発明1~3のいずれか一つの処理物である。
更に、本発明5は、前記発明1~4のいずれか一つの処理物を含有する食品である。
また、本発明6は、タマネギを一片の体積が平均で1~1000mm3である小片に切断した後、25~80℃で30~150分加温する工程と、更に100~200℃で1~30分加熱する工程とを含む、前記発明1~4のいずれか一つのタマネギ処理物の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本明細書で用いられている用語の定義につき説明する。
【0016】
「トリスルフィド」とは、結合:-S-S-S-を有する化合物である限り、特に限定されない。また、トリスルフィドは、1種のみでも2種以上から構成されていてもよい。なお、ネギ属由来のトリスルフィドとしては、例えば、式(1):
1-SSS-R2 (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基である)で示される化合物が挙げられる。
【0017】
ここで、式(1)においてR1及びR2は、同一でも異なっていてもよい。飽和又は不飽和であり、直鎖又は分枝鎖状の、炭素数1~3の一価炭化水素基R1またはR2としては、例えば、-CH3、-CH2CH2CH3、-CH2CH=CH2、-CH=CHCH3が挙げられる。なお、抗酸化作用の点からは、トリスルフィド中に、ジプロピルトリスルフィド及び/又はプロピル 1-プロペニルトリスルフィドが含まれることが好適である。
【0018】
なお、本明細書でのトリスルフィドの含有量は、周知慣用手段により測定された値をいう。例えば、本明細書での数値は、ガスクロマトグラフ HITACHI G-3000 gas chromatograph
{カラム…TC-WAX Bonded(60m×0.32mm i.d.)}を用いて、カラム温度40℃~220℃(3℃昇温/分)、試料注入部温度:250℃、キャリアーガス:ヘリウム 0.8kg/cm2、FID:水素 1.4 kg/cm2、Air:1.1kg/cm2で測定した値である。
【0019】
また、前記処理物は「乾燥重量を基準として0.015重量%以上」のトリスルフィドを含有する。特に上限はないが、ネギ属植物が原料である場合、一般的には0.06重量%程度である。なお、前記のように、トリスルフィドは全トリスルフィドを指すが、好適には、式(1)で示されるトリスルフィドである。したがって、好適には式(1)で示されるトリスルフィドを乾燥重量を基準として0.015重量%以上(好適には0.02重量%以上、より好適には0.03重量%以上、特に好適には0.04重量%以上)含有する。さらに好適には、ジプロピルトリスルフィド及び/又はプロピル 1-プロペニルトリスルフィドを、乾燥重量を基準として0.015重量%以上、特に0.03重量%以上含有する。
【0020】
「ネギ属植物」とは、Allium属に属する植物をいい、例えば、タマネギ、長ネギ、ギョウジャニンニク、ニラ、ノビル、アサツキ、ラッキョウ、ニンニク等が挙げられる。その中でタマネギが好適である。
【0021】
「処理物」とは、原料であるネギ属植物に一定の処理を施したものをいう。好適には、温度・時間・pH等の条件を設定することで、ネギ属植物中に内在する酵素をコントロールし、トリスルフィドを発生させたものを指す。なお、このように、ネギ属植物中の内在酵素のコントロールのみでトリスルフィドの含有量を所定量以上とすることが好適であるが、別ソースからのトリスルフィド(例えば、化学的合成により得られたトリスルフィド)を添加することにより、含有量を所定量以上としてもよい。したがって、本明細書にいう「処理」は、別ソースからのトリスルフィドを添加しない態様も、添加する態様も含む概念である。
【0022】
「乾燥」状態にある処理物とは、例えば、フリーズドライや通風乾燥したものが挙げられる。また、「湿潤」状態にある処理物とは、例えば、ペースト状、液状(例えばエキス)のものが挙げられる。
【0023】
「食品」とは特に限定されない。例えば、ネギ属植物の処理物を含む機能性食品が挙げられる。機能性食品にはネギ属植物の処理からなる粉末の他、ペースト、ドリンク剤、菓子等の食品加工物が含まれる。具体的には、乾燥形態の処理物をラーメンの加薬原料とする機能性フリカケ、乾燥形態の処理物を含有する栄養補助食品錠剤、湿潤形態(例えばエキス状)の処理物を含有する栄養補助飲料、湿潤形態(例えばペースト)の処理物を含有する機能性調味料・スープ、湿潤形態(例えばみじん切り)の処理物を含有する機能性ドリンクや餃子・ハンバーグ等が挙げられる。更に具体的には、そのまま、あるいはチコリー、ヤーコン、ハマボウフウ、ヒレハリソウ、マイタケ等のフリーズドライ粉末等を加えた形でのフリカケやラーメン加薬を挙げることができる。なお、本明細書にいう「食品」は、通常は、処理物と他の食材との混合物の形態であるが、処理物のみから構成されるものも含む概念である。
【0024】
次に、本発明に係る処理物の製造方法につき説明する。まず、本処理物の原料は、前記のネギ属植物である。ところでネギ属植物には、元来、トリスルフィドは含まれていないが、含硫アミノ酸とC-Sリアーゼが存在する。そして、この含硫アミノ酸とC-Sリアーゼとが反応し、その後、得られた反応生成物が熱化学反応により、トリスルフィドを得ることができる。したがって、基本的には、この含硫アミノ酸を多く発生させ、かつ、C-Sリアーゼを活性化する条件を選定する必要がある。
【0025】
【化1】

20130227200954203157

【0026】
なお、式(2)の含硫アミノ酸において、硫黄に結合する炭化水素基R1及びR2が、
-CH3のものは、ラッキョウ、ニラ、ノビル、ギョウジャニンニクやアサツキに含まれ、
-CH2CH2CH3のものは、タマネギ、長ネギ、アサツキやラッキョウに含まれ、
-CH2CH=CH2のものは、ニンニク、ギョウジャニンニクやニラに含まれ、-CH=CHCH3のものは、タマネギ、長ネギ、アサツキやノビルに含まれる。
【0027】
よって、タマネギ、長ネギ、アサツキ、ラッキョウを選択することにより、好適なトリスルフィドであるジプロピルトリスルフィドを多く含有する処理物を得ることができ、また、タマネギ、長ネギ、アサツキを選択する事により、別の好適なトリスルフィドであるプロピル1-プロペニルトリスルフィドを多く含有する処理物を得ることができる。
【0028】
なお、所定量以上のトリスルフィドを発生させるためには、以下の手段を講じることが好適である。
▲1▼ネギ属植物をカットする。カットをする際の温度は特に限定されないが、好適には室温であり、例えば10~30℃である。カット後のネギ属植物の形状、大きさは特に限定されないが、例えば、一片の体積で1~1,000 mm3である。また、一般に「みじん切り」「短冊切り」等の調理分野で使用される方式を採用することもできる。カット以外にも叩く、潰すといった方法を用いて、ネギ属植物を処理してもよい。
▲2▼次いで、カットしたネギ属植物を加温処理する。加温温度は、常温以上であり、例えば25~100℃、好ましくは40~80℃とすることができる。加温時間は、特に限定されず、例えば30~150分とすることができる。加温手段としては、通風乾燥機、湯浴、油浴、フライパンで炒める等の方法を用いることができる。また、カットしたネギ属植物を常温で放置することも加温処理に含む。加温処理したネギ属植物を、本発明の処理物とすることも可能であるが、公知の粉砕技術で粉末化してもよい。
【0029】
好適には、上記の加温処理したネギ属植物を、さらに加熱処理する。加熱温度は、例えば、80~250℃、好適には100~200℃とすることができる。好適にはネギ属植物片の中心温度が30~200℃、好ましくは、50~150℃となるような温度である。加熱方法は特に限定されず、通風乾燥機、湯浴、油浴、フライパンで炒める等の方法を用いることができる。トリスルフィドは常温(例えば、25℃)でもある程度増加するが、上記の温度範囲で加熱すると効率的に増加する。加熱時間は特に限定されず、例えば1分~30分である。
【0030】
なお、C-Sリアーゼが有効に働く手段であれば、上記の手段に限定されず、例えば、ネギ属植物をカットし、通風乾燥等した後に、微粉砕技術を適用し粉末化し、前記の粉末に水を添加し加熱する手段が挙げられる。また、ネギ属植物をまた、C-Sリアーゼが活性を有する限り、フリーズドライと組み合わせる手段であっても良い。
【0031】
また、本発明に係る処理物は、好適には抗酸化性を有する。この効果を奏するためには、前記処理物を1日あたり乾燥重量で0.1~500g摂取することが好適である。
【0032】
次に、本発明に係る抗酸化剤の製造法につき説明する。本発明の抗酸化剤の有効成分であるトリスルフィドは、含硫アミノ酸等の含硫化合物を用いて、公知の方法により製造することができるが、前述したネギ属植物の処理物に含まれるトリスルフィドを使用して製造することもできる。処理物に含まれるトリスルフィドは、処理物そのままの形態で、あるいは処理物から抽出して薬剤とすることもできる。抽出には、公知の方法を用いることができる。
【0033】
なお、抗酸化剤の形状は、特に限定されず、例えば、公知の方法を用いて、錠剤、コーティング錠、丸剤、硬若しくは軟ゼラチンカプセル錠剤、液状、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、クリーム剤、注射用液剤といった剤型とすることができる。
【0034】
前記抗酸化剤には、賦形剤、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香料、浸透圧の変化用の塩、緩衝化剤、コーティング剤、抗酸化剤等の補助剤を含むことができる。これらはまた、他の治療上有用な物質を含むことができる。
【0035】
本発明に係る抗酸化剤の効果を得るためには、使用者の体重1kg当たり、一日に前記薬剤を有効成分トリスルフィドの重量でおよそ0.01~10mg摂取することが好適である。薬剤は、経口投与、直腸内への投与、局所又は経皮的な投与等が可能である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1~3、比較例1)
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄をみじん切り(20℃でカット、一片の体積10 mm3)にし、常温(25℃)で2時間放置した後、40℃で、24時間通風乾燥し、乾燥物を微粉砕技術を用いて粉末とした処理物を得て、実施例1とした。
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄をみじん切り(20℃でカット、一片の体積10 mm3)にした後、60℃で、2時間通風乾燥機にて加熱し、タマネギのペースト状を得て、ペーストを実施例1と同様に通風乾燥し、粉砕して粉末とした処理物を得て、実施例2とした。
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄をみじん切り(20℃でカット、一片の体積10mm3)にし、常温(25℃)で2時間放置した後、-40℃で急速凍結させ、次いで蒸発脱水させた後、粉砕してフリーズドライ粉末とした処理物を得て、実施例3とした。
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄をそのまま180℃で加熱して酵素を失活させた後に、実施例1と同様にして通風乾燥し、粉砕して粉末とした処理物を得て、比較例1とした。
【0038】
実施例1~3、比較例1の処理物に、それぞれジエチルエーテルを加え、室温(約25℃)で約2週間放置し、ロータリーエバポレーターにて濃縮して、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。なお、ガスクロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフ HITACHI G-3000 gas chromatograph{カラム…TC-WAX Bonded(60m×0.32mm i.d.)}を用いて、カラム温度40℃~220℃(3℃昇温/分)、試料注入部温度:250℃、キャリアーガス:ヘリウム 0.8kg/cm2、FID:水素 1.4 kg/cm2、Air:1.1kg/cm2で測定した値であり、結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
20130227200954230384
【0040】
表1より、本発明の処理物である実施例1~3には、トリスルフィドが多量に含まれているのに対し、カット前に酵素を失活させた比較例1のトリスルフィドの含有量は少量であることが確認された。
【0041】
(実施例4~15)
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄をみじん切り(20℃でカット、一片の体積10mm3)にし、次いで下記表2に示す条件で処理を行った後、粉砕して粉末とした処理物を得て、実施例4~15とし、上記と同様にしてガスクロマトグラフィーでトリスルフィド含有量を測定した。結果をグラフ1に示す。
【0042】
【表2】
20130227200954253737

【0043】
【表3】
20130227200954291039
【0044】
グラフ1により、本発明の処理物である実施例4~15には、トリスルフィドが多量に含まれ、特に、処理条件に加熱を含む、実施例10~15では顕著であることが確認された。
【0045】
(実施例16~27、比較例2~3)
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)の品種を札幌黄に代えて北もみじを用いた他は、実施例4、6、9、10,12,15と同様にして処理を行い、それぞれ実施例16~21を得た。また、北もみじを用いて、また従来法A〔1cm幅スライス後直ちに-40℃冷凍、その後フリーズドライ〕を用いて処理をして比較例2を得た。
【0046】
北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)の品種を札幌黄に代えてアーリーグローブを用いた他は、実施例4、6、9、10、12、15と同様にして処理を行い、それぞれ実施例22~27を得た。また、アーリーグローブを用いて、従来法Aを用いて処理をして比較例3を得た。
【0047】
実施例16~27を上記と同様にしてガスクロマトグラフィーでトリスルフィド含有量を測定した。結果をグラフ2に示す。
【0048】
【表4】
20130227200954354792
【0049】
グラフ2により、タマネギの品種に関わらず、本発明の処理物にはトリスルフィドが多量に含有されることが確認された。
【0050】
トリスルフィド含有量が高い実施例6、9、12、15において、通風乾燥機及びウォーターバスでの放置時間を30分、1時間、2時間に設定したものについて、トリスルフィド含有量を測定した。結果をグラフ3に示す。なお、グラフの縦軸は相対量である。
【0051】
【表5】
20130227200954462068
【0052】
グラフ3より、通風乾燥による加温では、1時間をピークにトリスルフィド含有量が減少していく傾向があることが確認され、加温時間は1時間程度が適当であることが示唆されている。一方、ウォーターバスでは、時間の経過に比例して、トリスルフィド含有量が増加する傾向が確認された。
【0053】
ネギ属植物に含まれる含硫化合物のヒトLDL酸化抑制効果を測定した。測定は、下記のように行った。結果をグラフ4に示す。
【0054】
〔試料の調製〕
試料はネギ属植物に含まれる代表的な含硫化合物10種を、下記の方法を利用して調製した。
アルキル(アルケニル)ジスルフィド及びトリスルフィドは、硫化ナトリウムに硫黄を加え、100℃、1時間で二硫化および三硫化ナトリウムをつくり、臭化アルキル(アルケニル)(ただし、メチル基の場合はヨウ化メチル)を加え、40~50℃で、6時間反応させ、生成物を逆相系のカラムを使用し、液体クロマトグラフィーによって、ジスルフィドとトリスルフィドを分離することにより得た。
S-アルキル(アルケニル)-L-システインは、液体アンモニア中で、L-シスチンに金属ナトリウムを加え、さらに臭化アルキル(アルケニル)(ただし、メチル基の場合はヨウ化メチル)を加え、1時間反応させ、生成物を再結晶によって精製することにより得た。
S-アルキル(アルケニル)-L-システイン スルホキシドは、S-アルキル(アルケニル)-L-システインに、30%過酸化水素水を加え、5~10℃、4~6時間反応させ、生成物を再結晶によって精製することにより得た。
【0055】
〔抗酸化性の測定〕
市販のヒトLDL(シグマ製品)150μgの生理食塩水溶液に、DMSOに溶かした10mM含硫化合物を100μl加え、生理食塩水で980μlにフィルアップした。これに酸化促進インデューサーである5mM硫酸銅を20μl加え、37℃でインキュベートし、3時間後TBARS(チオバルビツール酸反応物質)試薬2mlを加えて15分間加熱した。波長532nmの吸光度を日本分光(株)V-530を用いて測定し、供試物質無添加対照に対する百分率で表示した。
【0056】
【表6】
20130227200954524926
【0057】
グラフ4により、トリスルフィドは高い抗酸化活性率を示すことが確認された。また、その中でも高い活性率を示したジプロピルトリスルフィドはIC50 1mMであった。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明のネギ属植物処理物は、多量のトリスルフィドを含み、抗酸化性を有する。また、トリスルフィドを有効成分とする抗酸化剤は、優れたヒトLDL酸化抑制効果を有する。